ナンパコッタ

例えばそんなナンパ

ネガティブの中で前向きに

ネガティブなことを考えながら声を掛け続ける人がいる。元がネガティブなのか、今だけネガティブなのかは分からない。辛いという感情自体は否定はしない、だって辛いんだから。ただ問題なのは本当に鬱々とした状態でやって何かが起きることは殆どない。ただ世の中にはいろんな形の歪みをもった人間がいるので、複雑な鍵穴と鍵のように出会い触れ合える存在もいる。知り合いに自己欲求の塊みたいな酷く歪な人間がいるが、そんな彼ですら声掛けを通し誰かと巡り合えている。東京の懐の広さを感じられるハートフルな瞬間だ。女からすれば珍獣を見たり、ゲテモノを食しているような感じなのだろうが、ある種の繋がりを持てるというのはナンパの奇跡である。なにせどう考えても普通の界隈で真っ当に女と繋がりをもつことが不可能な存在だから彼の生きる場所はここにしかないし、普通じゃないというのもナンパではある種の強みになるらしいということを思い知らされている。

それとは別に名前は知っているが話したことがない亡霊のようなナンパ師がいる。どうやったらそんなに寂しさを纏えるか分からないくらい負のオーラを漂わせ街中を歩いている。誰に声を掛けても反応してもらえないので余計に鬱々していっているんだと思う。俺が思うにそういった人たちは自分で選んでナンパをしているのはなく、ナンパというアクティビティに目が眩んで迷い込んだだけに思える。夏の虫が灯りに集まる習性をもつように、その身を焼かれてながらもナンパに縋り続けている。

最初のネガティブな考えついて話しを戻す。セロトニン不足だとか鬱ステージが高いとか言ってしまえばもうそれで話は終わってしまうんだけど、街に出てる時に反応が厳しく鬱々としてくることは誰にだってあるんだと思うが、残念ながら街にでてしまったら、いい反応が来るまで声を掛け続けるという手段しか残されてはいない。なので逃げたい衝動や死にたいと思うような気持ちはそれはそれで肯定してもいいと思う。何事も前向きに生きようとみたいにポジティブを偽ったところで何にもならないし、そういったキナ臭い人間には反吐がでそうになる。なのでクソみたいな気分でいいし、脱力なんかせず、拳を握りしめて声を掛け続ければいい。ネガティブの中でも前へ進んでいく。俺みたいなクソ野郎が声を掛けても一生何も起こらないかもしれない、だがもしかしたら辛さの向こうに行くと世界が変わるかもしれない。そういったカオスを愉しもうとすると気が楽になるように俺は思える。